天使が人間になるとき
2015年の夏のある日、ヤツとパブで初めて出会ったとき、こう聞いてきた。
「君にとってのベスト映画は?」
私はすぐにこう答えた。
「Wings of Desire(ベルリン・天使の詩)だよ。あなたは?」
「数え切れないほどあるけど、Taxi Driverだな。俺にとってのオールタイム・ベストだ」
その答えを聞いて、私はすぐさまデ・ニーロが鏡に向かって射撃の真似事をしている絵柄が頭に浮かんでしまって、ちょっと可笑しくなった。それでこう思った。
「彼はどんな映画を撮る人なんだろう?」
・・・・・
ヴィム・ヴェンダースの『ベルリン・天使の詩』は、天使が人間の女性に恋をして、天使をやめて人間になる話だ。
美しいモノクロが際立つその映画は、私の心を捉えて離さない(人間になった途端にカラーになっちゃうのだが)。それにしてもへんな天使だ。永遠であることをやめて、人間になっちゃうなんて。人間の女性に恋をして。
どうして天使は人間になったのだろうか。
もちろん、恋をした女性に愛を囁きたかったからだろうけど、今はそれだけじゃないと、分かる。それは・・・愛を循環させたかったからだ。
天使の愛は、見守る愛で、一方向の愛だ。でも、人間の愛はそうじゃない。互いを見て、コミュニケーションを図り、ぶつかり、互いを認め、受け入れ、循環させていく。一方の要求だけを、片方が呑み続けるなんて関係性は、成り立たない。人間の愛は、必ず双方向に働くエネルギーだ。
そのことが、とても愛おしいと思う。この5年半の経験を通して気づいた、大切なこと。
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